開催のごあいさつ

 サンシャインクリエイション2023Autumnにご参加いただき、ありがとうございます。観測史上で最暑といわれる盛夏は過ぎ、あっという間に朝晩は肌寒い季節となりました。2023年も残りわずか、今年最後のクリエイションとなります。

 5月に法令上の新型コロナウイルスの扱いが変更になって以降、同人誌即売会だけでなく、スポーツイベントや音楽フェスなど、いろいろなイベントが4年ぶりに従前のような形で開催されるようになりました。ファンが集まる、近くで見る、お祭り騒ぎをする、語り合うといった「リアル」の意味を、ひとつひとつ再確認している気がしています。

 新型コロナウイルスの流行下でリモートワークが広がり、これを機にいわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速化する、というのは大方の予想通りでした。しかしながら、先進的な米国企業でも出社回帰の流れが強まっているのを見ると、デジタルに落とし込みきれない「そこにいることを感じる」という価値を、改めて感じています。

 今回も会場内で5つのプチオンリーが開かれています。いまや、会場を借りてオンリーイベントを開催することも、簡単ではなくなりました。オンリーイベントというのは、同じ作品のファンや嗜好を持った人と、共感しあうことができる場なのだと思います。リアルの場のひとつの楽しみ方として、継続的に応援していければと考えています。

 表現まわりでいうと、グローバルなオンライン書店やクレジットカード会社など、巨大プラットフォーマーによる、法令による直接的な規制ではなく、独自ルールによる間接的な「流通規制」が問題になることが増えてきました。巨大企業であればあるほど、反論しづらい「ただしい」意見や、表現をキャンセルしようとする声に流されやすくなります。こうした観点でも、同人誌即売会のような草の根の出版・流通ネットワークには、あたらしい意味があるのかもしれません。

 表現の自由とは、大多数から感情的に忌避されるものであっても、法令に反しない限りは出版・流通できることで、初めて成り立ちます。自分が見たくないものでも、世界に存在することを認めない態度は、いつか自分に返ってきます。表現を規制する側は悪いことをしたと思わないので、要求の範囲を拡げ、規制の内容を強化していきます。そういう点については、歴史に学んでいきたいと思います。

 紙面の都合もあるので深い議論はできませんが、生成AIに関する議論も盛んになってきました。知的財産権の問題はあるにせよ、クリエイティブコモンズやオープンソースなど、学習に利用できるリソースが多数ある以上、文書や画像の生成における道具として、進化が加速していくことは間違いないでしょう。手書きの背景にとってのスクリーントーン、Gペンにとっての液晶ペンタブレット。技術や道具の進化において、従前の資産や技能の意味づけが変わってくる以上、まだまだハレーションは続くと思いますが、表現の可能性や裾野を拡げうるものとして、前向きに見守っていければと思います。

 さて、これまでも、常に世界のどこかでは戦争や紛争が起こっていたのでしょうが、SNSはかつてなくそれらを身近にし、隣家での出来事であるかのように感じさせます。心がかき乱されるようなニュースの多いこのごろですが、同人誌即売会という場がみなさんの明日の活動への活力となれば幸いです。今回もよろしくお願いします!

クリエイション事務局一同