開催のごあいさつ

 サンシャインクリエイション2024 Summerにご参加いただき、ありがとうございます。梅雨時の開催ではありますが、紙の敵は水ですので、当日が晴天に恵まれることを祈っております。

 コミケットが、過去最高の国・地域からの参加があったと言っていましたが、サンクリでも海外からの参加者をずいぶんお見掛けするようになりました。デジタル全盛の世界で、海を隔てた海外から参加者が日本の同人誌即売会に魅せられる理由は、そのコンテンツの多様さであると同時に、表現する人とそれを求める人の近さではないかと考えています。日常的に同人誌を楽しんでいる日本のみなさんからすると当たり前のことですが、世界におけるその価値を改めて認識しています。

 同人誌というインディーズ出版の世界においては、商業出版や広告業界で存在が許されないようなものでも、法令に反しない範囲では、エッジの立った表現をすることができます。もちろん同人誌といえども、世の中に公開する時点で商業出版と地続きですから、理屈上の差異はないのですが、デジタルとリアルの伝播速度の違いというものが、効いてきているのでしょう。若干後ろ向きな理由ながら、そこにも同人誌というメディアの存在意義があるのかもしれません。

 デジタルに表現を伝えること以上に、デジタルで決済を行うことが、現在課題となっています。 必ずしも成人向け特化ではない動画サイトや通販・ダウンロードサイトが、グローバルブランドのクレジットカードの取り扱いを中止するなど、表現に対する「外圧」が強まっています。例えば、出版社や取次が集中する東京都の青少年条例は、性的表現を直接禁止するものではありませんが、流通の制限による事実上の規制を行うことができます。これと同様に、デジタル決済を制限することは、表現に対する事実上の規制です。いちばんの問題は、この規制権限を、民間の一事業者が有していることです。リアルでの同人誌流通はキャッシュレスも出てきているとはいえ現金決済がほとんどですから、不便さが逆に表現を守るという、なんとも皮肉な例ではあります。

 今回も「外圧」のターゲットは性的な表現ではありますが、これはいわゆる線引きの問題であり、個人が「これはさすがに」と感じるような表現を切り捨てていくと、まるで『ドラえもん』の「どくさいスイッチ」のように、規制の波は足下に迫ってきます。自由な表現を守り、わが国が誇る多様性の土壌がより豊かにしていくよう、選挙に行くなどして関心を示していきましょう。

 夏のサンクリが、ひとりでも多くの参加者にとって、表現と出会い、互いにつながり、新しいエネルギーを生み出す「ハレの日」であることを祈って、あいさつとします。今回もよろしくお願いします!

クリエイション事務局一同