開催のごあいさつ
サンシャインクリエイション2026Autumnにご参加いただき、ありがとうございます。関東地方も8月の集中豪雨に続き、9月も強い台風が上陸するなど、自然災害が続いています。被害にあわれた方や生活に影響が出た方が、多数いらっしゃると思います。心よりお見舞い申し上げます。
2026年は「エージェントAI」元年と言われています。質問に答えたり相談に乗ってくれるだけでなく、手続きや申し込みまで代行してくれるAIエージェントを搭載したスマホも今年発売されました。今後は、通販サイトのリコメンドを超えて、AIが生活に合わせた買物を提案するだけではなく、その代行までしてくれるエージェンティック・コマースも一層進んでいくことでしょう。同人誌即売会への申し込みも、忘れずにエージェントAIがやっておいてくれる時代になるかもしれません。
直近の話題として、数学の世界でも計算ではなく証明の形式化が発展し、数学者を数十年悩ませ続けた難問がAIによって解かれ始めています。2005年にアメリカの未来学者レイ・カーツワイルが「技術的特異点(シンギュラリティ)」という「AIが人間の知能を超えて、AI同士が学習しあうことにより、その進化が指数関数的に加速する」時代が2029年頃に到来すると予言しました。これはコンピューターの中心部品である集積回路の進化を予測する「ムーアの法則」をAIに当てはめたものですが、かなりの精度でこれが実現しつつあります。
ありふれた言い方をすれば、とても便利な世の中になりました。そんな一見便利な世の中における「AIに選ばれた作品が、AIに選ばれた決済手段でしか、我々に届かなくなる」ことのリスクは、検索・金融・配送といった社会的インフラがGAFAMのようなグローバル・メガプラットフォーマーに掌握された後のシナリオとして、何回か本稿でも語ってきました。今回はもう少し違う観点から、人間の意志の価値について考えたいと思います。
エージェントAIが発展した時代でも「すべての人間はAIの言う通り、”かしこく”振る舞うのか」という疑問があります。飲み会が盛り上がって飲みすぎてしまい、道端で寝てスマホを失くしてしまう。カッコいいところを見せたくて、シャンパンを入れてしまう。ついついほしくなったものを、勢いで衝動買いしてしまう。一発逆転を狙って、大穴の馬券を買ってしまう……ということは、なくなりそうにありません。むかしの哲学者は人間の「愚行権」に触れていましたが、そういう最適化から離れた「遊び」の部分があるのが人間なのだと思います。 (余談: ちなみに、意思決定についての研究においては、経済学的な「最適化」ではなくて、ほどほどでよしとする「満足化」を数学的に定式化しようとしたものなんかもあります。)
そもそも、何をもって「最適」かは人によって違うし、その日の気分によっても変わるのだから、どんなに自分の好みを学習したAIでも、それを完全に再現することはできません。この「一般的に最適でない選択肢を敢えて選ぶ」ところに人間の意志があるし、価値があるのだと思います。先人たちが「野暮」と言って嫌い、「粋」といって大切にしたものに似ているのかもしれません。
このことを考えるきっかけになったのは、ちょうど北海道の離島で開かれていた同人誌即売会に、遠方からたくさんの方が参加されたようで、同人誌を通じた交流はもちろん、そこで昆布を買っていたりうに丼を食べていた話をSNSで見たからです。とても粋だな、と思いました。そういう私も、今年の夏は大雨の降る秋田のフェスに参加して、田植えみたいな地面の上でずぶ濡れになりながら、トリのアーティストと終演後の花火で泣いていた記憶があります。
単に作品を「情報」として捉え、それを消費するだけであれば、自分の好みを把握したAIに選ばせ、デジタルや通販で手に入れればいい。でも、自分で「想い」を持って選び、他人の「想い」とのクロスオーバーを通じて、その経験は自分の中で価値あるものとして、記憶に残るのでしょう。さらに将来きたるかもしれない、AIによって人間が義務的な労働から解放される時代、人間がより自由に考え、遊ぶ時代にこそ「意志を持って自分で選び取る」ことの価値は、より輝いていくのでしょう。ずいぶん大それた話ではありますが、人間が家でゴロゴロしながら、漫画・アニメ・ゲームに興じられる日が来ることを信じています(笑)
当日が台風一過の秋晴れとなることを祈りつつ、ご挨拶とさせていただきます。今回もよろしくお願いします!
クリエイション事務局一同